小さな水槽で、金魚やなんかを飼ったことはあったけれど、猫なんて初めて。面白くてかわいいのね、これが。じゃれたり、走り回ったりするのも面白いけれど、遊び疲れて寝てしまったりするのもいい。ううむ、こんなふうな小さい生き物が、私の家からいなくなって、もう、ずいぶんたつのなだあと、すっかり大人の女の人になった娘たちを見ながら、彼女らの小さかったころのことなんかを思い出したりしてしまった。申し訳ないけれど、お父さんにとって、子猫と子どもって、あんまりかわんないもんだったのかしらねえ、なんて、無責任なことを考えてしまったりもした。
猫と人間を比べることに抵抗がある人もいるかも知れない。けれど、ごく若くてまだ小さい生き物が、それを取り巻く社会に与える影響は、人も猫もあまり変わらないのではないか。なにしろ気の休まるときが無いというような負のストレスを含めて、その社会に活力を与える存在としての子どもたち。膝の上で無心に眠るチビ猫をなでながら、僕はさまざまなことを考えた。
その猫は、落ちつく場所に落ちつくことが出来て、今は、もう僕の家にはいない。でも、犬か猫を飼うために、家を建てるってのも良いかもしれないなと、僕は考え始めている。