平成11年8月28日

 「トンボの絵を描きたいのだが、どう描けばよいのか。」と、女の人が創作室を訪ねてきた。8月のこういう相談は、たいてい宿題がらみであることが多い。
 ま、誰が描くのでもいいのだけれど、僕は、トンボの描き方、よくわからないのよ。トンボって、そんなにしょっちゅう描くもんじゃないから、よくわからないのは普通だと思う。とは言え、なんとかしなくてはならないな。さて、トンボか。何はともあれ、まず、本物のトンボを見ないとね。で、とにかくトンボ採りにでかけるわけだな。近くの公園の水のある場所のまわりとか、団地の道路沿いにいたりもするし、もちろん子どもの方が良く知っていたりする。トンボが見つかったら、なんとかして1匹捕まえてみるか、捕まえられなかった場合は、近くによって観察するなり、トンボが飛び回っているあたりを、こっちもなにげなく歩きまわって、なんとはなしに見たりすることになる。カメラで撮るっていう手もありだな。
 そうこうしているうちに、その絵を描きたい人は、いったいトンボの何を描きたいのかが、だんだんはっきりしてくる。飛んでいるところなのか、標本のようなトンボなのか、トンボ好きの私なのか、実は、トンボが飛んでいるまわりの風景だったのだ、とかね。そこでね、やっと絵を描くという実際の作業が始まるわけよ。
 こういう風に考えてみると、絵を描くという作業の中で、実際に紙の上に絵の具で絵を描くという部分は、たぶん、一番簡単で楽しい時間なのだということがわかってくる。絵を描くためにすることこそが、実は、とっても大切で、時間がかかることなのだ、ということがわかってくる。
 ね、だから、夏休みには、絵を描く宿題が出るのではないかしら。