
数日前、ツユ入り宣言が出されたのに、今日もすがすがしく晴れて、ここから見える空は、ああ、雲一つなく水色だ。地平線の近くを飛行機が飛んでいる。後ろに短い飛行機雲。

今月初め、福岡から、台湾の航空会社の飛行機に乗って台北に行った。その機内では、高度と速度の情報がたえず流される。着陸のために高度を落とし始めた飛行機から、外を眺めていると、400メートルの高さに雲があった。400メートルの高さって、ふと思えば、陸上競技のトラック1周の長さではないですか。かって、現役のころ、そんな距離なんか、私は1分かからないで走り抜けられた。でも、空だとその距離にもうたくさんの雲があって、下を見ると、やたら高いのだった。ふだんあまり気にしていないことだけれど、飛行機に乗って1万メートルの空を飛んでいると、すぐ上に見えるのは空というにはあまりに暗い藍色の広がりで、空ではなく、宇宙がもうそこにあるのだということを思い出させる。でもまあ、それは当然で、地上1万メートルの高さで放り出されたら、人間はあまり長い間生きてはいられまい。気温とか紫外線とかもあるだろうけれどその高さでは、人間が生きるために必要な空気が、既にほとんど無いのではないか。それにしても、1万メートルっていったら、たったの10キロのことなのだよなあ。ううむ、使える空気って厚さ10キロぐらいしかなかったのか。ここからどの方向に10キロ歩いていっても、たぶんそこはまだ仙台市の中だ。走って1分というわけにはいかないけれど、10キロはそんなに長い距離ではない。
ううむ、本当は、空気ってそんなにたくさんあったわけではなかったのだなあ。青い空を飛ぶ飛行機を眺めながら、僕は、21世紀に遺す空気のことを考えていた。