平成11年3月27日

 3月になると、美術館の創作室にある大きな粘土槽は、今年1年子どもたちと作ってきた粘土でいっぱいになってしまう。あふれて空気にさらされた粘土は、すぐに固くなってしまうので、そうなる前に、僕は穴を掘る。前にも書いたけれど、穴を掘るのが、僕は好きで、そしてなぜか面白いんだな、これが。 要するに、粘土槽に入っている粘土をすっかり掘り出して、上と下を入れ替えつつ、埋め戻す、という作業を、楽しみながらやりました、ということなのだけれど、しかし、石のような固さから、べたべたで、足がくっついて持ち上げられないものまでの粘土を、数トン、一人で掘るというのは、なかなかの運動ではあった。
 ここ十数年、僕は、毎週できるだけ2回以上、何か体を動かすことにしている。毎週1回仕事帰りに水泳をする。週ごとの休日には、歩くか、自転車かモーターサイクルに乗るかする。と言うとすぐ、トライアスロンに出るんですかという人がいるので言っておきますが、違います。もう競争はうんざりなの、僕は。歳取ってきたら持久力、これです。
 歩いたり、泳いだり、乗ったりすることを、僕は、時間をかけてゆっくり続ける。何をするにしても、息が切れる一歩手前ぐらいのペースで、まったくいいかげんに1時間以上続けてみる。あきないかって? 歳取ってくるとあきないの。長い時間、身体を動かし続けるときに大切なのは、たぶん、なにか考えたり思い出したりし続けられるかってことで、それはもう、歳取って経験のある人の勝ちよ。僕は、本を読むのも好きだしね。
 自分の好きなことをするために、ふだんの生活の中で何かをやって積み重ねておく。そうすると、好きなことことがもっと楽しくできるし、楽しいことも広がりやすくなる。こういうの、良循環って言うのかなあ。