
前の車で、家族とどこかへ出かけるのはなかなか楽しいことだった。窓は、最小限の部分しか開かなかったけれど、布製の屋根が簡単に全部開けられた。エンジンを冷やした風が、そのまま入ってくるシステムのヒーターは付いていたけれど、どうせすきま風とかで寒いから、冬、車に乗るときは、みんなきちんと防寒具を着ることになっていた。だから、光のページェントの中を、屋根を開けて走る、なんてことが簡単にできた。あれはすごいよ! ラジオは付いていたけれど、まわりから入ってくる音がうるさくて、あまり実用的ではなかったので、僕の家族は、走る車の中で、みんなで歌を歌いながらドライブするのが常だった。そうすると、車の中が暑い寒いなんて、本当は、どうでもいいことだったのだということがわかる。今は、ラジオを聴いている。
もちろん、今乗っている車も、たいへん気に入ってはいる。しかし、近代的になるということは、本当に僕の家族に幸せを運んできてくれたのだろうかと、一方で思う私もいるのだった。