
もう1本はスイス製の小さな万能ナイフで、これは確かサンタクロースのプレゼントではなかったろうか。ナイフと一緒に、良く切れるはさみや、プラスチックの爪楊枝などが付いていて、僕がちょっと楊枝貸してというとすぐどこからか出てくるところを見ると、いつもポケットやバッグなどの手の届くところに入っているはずだ。
ナイフは人間にとって、最も古くからある基本的で大切な道具である。人間は、身に寸鉄を帯びることによってここまで進化してきたのだといってよい。
問題は、使い方である。怖いナイフがあるのではない。怖い人間がいるのである。そして悪い子どもがいるのではなく、悪い大人がいるのである。ナイフを取り上げられたあの人たちは、当然、次は包丁を持ってくる。大人は、次に、台所から包丁を締め出す運動を始めるのだろうか。
あわてないで、何をまずなすべきかを考える時が、始まっていると僕は思う。