平成9年4月26日

 ずうっと前、ある放送局のラジオ番組に呼ばれて、子どもとの関係についてのお話をした。このコラムでいつも書いているようなことを、僕たち大人も、ほんの少し前まで子どもだったことを忘れないようにしながら、彼らとの正直真剣な話し合いを通して、お互いに楽しく生活を組み立てましょう、というようなことを、アナウンサーに聞かれるままにいろいろしゃべったのだった。 僕がびっくりしたのは、番組が終わって「はい、ご苦労さまでした。」となったとたん、今まで「なるほど、そうですね。」と聞いていた、そのアナウンサーが、「で、齋さんちって、本当はどうしてんですか?。」と、まったく当たり前のことを聞くように質問してきたことだった。あのね、今、子どもとつきあう基本姿勢は、正直真剣って言ったばっかりじゃないですか、ほんとはどうしてるって、話したとおりにしてんですよ。僕が、このコラムで書いてきたさまざまなエピソードは、僕が実際に子どもたちとやってみて、おおそうだったのか、やっぱりそうだよな、なんとまぁ、おやこれは、というようなことだけなのだということを、今一度、ここで確認しておこう。
 子どもと相談して何かをすることは、大人にとってちょっと面倒くさい。大人が10考えたことも、彼らとやると、5ぐらいしかできないことも多い。でもね、そこの、考えていたものの5しかできなかった、別の見方をすれば、最初どうなることかと思ったけれど、5もできた、というところが、彼らといっしょにやる具体的な生活の場所なのだよね。
 正直に彼らと相談しながら、真剣にやれるだけやってみる。毎日の生活の中で、子どもたちがごくふつうにやっていることを、僕たち大人も、ふつうにやってみる。それだけのことだと、僕は思うんだけれどなぁ。