
仙台の北にあるW町に、おいしいイタリア料理を食べさせるレストランがあって、ある日、両親と、食事に行った。その日のメニューは、しかし、お魚だった。とは言え、もちろん魚が嫌いとか好きとかのレベルを越えた上手な料理だったので、母も、喜んで食べた。最後に、彼女の皿の上に、魚の皮が残った。その皮も、もちろん上手な料理の一部だったから、食べ終えていた僕は、言った。「お母さん、その皮も食べなさい。おいしいの、もったいないからね。」母は、一瞬、困ったような顔をしてその皮をフォークで取り、目をつぶって口にいれ、一生懸命にのみこんだ。僕がそれを見ながら感じていた気持ちは、すごく不思議なもので、彼女は、すごくかわいらしかった、と言うのが、一番近い表現になるかなぁ。
僕たち大人は、子どもに、さまざまなことを強要するときがある。さて、しかし、子どもが、それを一生懸命やろうとしている姿を見て、僕たちは何を思うだろうか。その時の思いと、この時、僕が母を見て感じた気持ちは、どのように同じで、どのように違うのか、ここしばらく、静かに考えてみたいと思っている。