
と言っても、まなじりをけっして万全の準備をし、ねじり鉢巻きで出発だ、とかいうのでは、もちろんありません。ごく軽薄に出かけて、疲れたら休みつつ、しかしなんとなく歩き続けるうちに着いてしまうというような、本当にお散歩の長いやつ、というのが、僕の好みです。お財布さえ忘れてなければ、ま、あとはその場で何とかなるんじゃないの、日本語通じるんだし。
のんびり、しかしきちんと歩いてみると、僕が普通に歩く早さは、よく言われている時速4キロメートルよりは、だいぶ速いことがわかる。相当のんびり歩いていると思っていても、時間は、僕を、思わぬところまで運んでゆくことにびっくりする。例えば20キロメートルという、普通なら乗り物などに頼ってしまう距離が、実は、思いもかけないほど簡単に到達してしまう距離であったことにびっくりする。そして、人間って結構ちゃんとした動物だったんだなぁ、ということがわかってくる。人間で良かったな。