平成8年6月22日

 美術館での粘土遊びでは、子どもたちは、まず着替えをして裸足になる。裸足で、廊下のリノリウムの上に立つと、ほとんどの子どもは、くすぐったそうな、しかしうれしそうな顔をする。裸足で、冷たい床の上に立つのは、ちょっとくすぐったい。そしてかならず何人かは、裸足になりたくないと、けっこう真剣に困った顔をする。4月に書いた、学校のペンペナ底の上履きについてのコラムを読んだ小さい子どもを持つ友人から、ファクシミリが届いた。それは、5月14日付けのA新聞の切り抜きで、「土踏まず養成へ子供用地下足袋」という見出しで、三重県のお医者さんが、最近の過剰に足を保護する子供靴が、土踏まずの無い、転びやすい子どもを作っているという観察結果から、きちんと土踏まずを形成するために、裸足に近い地下足袋を履かせる運動を始めている、というものだった。
 子どもの足のことをちゃんと考え、なおかつその上を行く活動をやっている人がやっぱりいたんですねぇ。
 土踏まずのことまでを考えて、今の学校が、あのペナペナ底の靴を上履きとして指定しているとは、状況を好意的に見渡したとしても、僕にはとても考えられない。だから、前に書いた考えを撤回する気はないけれど、しかし、なるほど、こういうことはありうるな。裸足になったり、泥んこになったりするのが、必ずしも好きだとは言い切れない人が、僕の子どものころから比べると、だいぶ増えているのは、僕の経験でも、相当深刻に、本当だ。小学校に入る頃に、きちんと足に良い靴について考えることができるため、まずは、裸足の活動が好きな子どもになることを、始めなければいけないようだ。
 この地下足袋は、この夏から、販売されるという。ちょっと見てみたいと思う。