平成7年2月25日

 雪の日に、家族で車に乗っていたら、突然、バカンという音とともに、車の中に雪がどっと吹きこんできました。突然、すごくすてきな状態になったので、僕たちは「わぁっ」とかいいつつ、笑って手をたたきました。僕の家では、こういうとき、こうなるんだよなぁ。 僕の家の車の屋根はキャンバスで、それは、先に金具の付いたゴム紐によって車体に止められている。それは、冬の寒さでそのゴムの弾性がなくなり、何かの拍子に止め金が外れて、吹き飛んで開いてしまったという出来事だったのである。屋根をゴムで止めている?という疑問はごもっとも。しかし、家の車はそうなのだからしょうがない。2CVというガタピシの、でもかわいい、家族の一員の車。
 で、やっぱりこれはもう寿命かと、僕は新しい屋根を注文しました。その時に、今のは、開けるときにいっぺん車外に出て留め金をはずし、手でクルクルと丸めてフックに止めるという方法だったのですが、新しいのは車の中からパタンと開けたり閉めたりできる機構のやつをたのみました。ま、せっかくなんだし。
 その事を家の人たちに発表したら、なんと、みんな少し悲しそうなのね。簡単簡便というのは、我が家らしくないと、こう言うわけです。さ、屋根を開けるぞ!といっぺん止まって、しみじみ、わくわく、クルクル巻き取ると、パカンと青空が広がる、そういう方がうちらしいのではないかと、そう言うわけです。僕は、とてもうれしかった。
 急いで簡単に、効率良くどこかへ行くためだけにではなく乗る車が、僕の家にはある。一見面倒臭いことの中に、楽しくわくわくすることがたくさん隠れている。何が面倒なのか点検してみると、僕らの求めてきた豊かな生活って、けっこう的外れだったんじゃないのかなぁと思えてくる。