平成6年8月27日

 ごく控えめに見たとしても、夏休みの美術館はやっぱり、少しうるさい。新しく美術館を作るとなると、「開かれた」とか「活気あふれた」とか、ま、何か元気のよさそうなうたい文句で始めることが多いのですが、これって、具体的には、「騒々しくて、うるさい」ってことと、同じになってしまうわけですね。僕たちの国では。そうして、それは家庭でのしつけがなっていないからだと、美術館なんかに来たときには、静かに鑑賞するように、ちゃんと、おとうさんやおかあさんが教育しなければいけないんだと、言われちゃったりするわけですね。
美術館って静かにしていなくちゃいけないところなの? 子どもたちと美術館の探検をするというのも、僕が、美術館でしている仕事の大切な部分で、これまで、さまざまな年齢の小さい人たちと、それこそすみからすみまで巡り歩いていきました。探検に出かけてすぐ、展示室(要するに、ここんとこで騒ぐと、目立つのね)に入るまでに、僕は、子どもたちと、周りを注意深く観察することを練習します。僕たちは、一体今どこにいて、そこはどのような状況になっているかについて、気にしてみる。するとね、ほら、ここから、なんだか暗くなってるじゃない、とか、あれ、ちょっと涼しくなった感じだぞとか、あるわけよ。そういう事に気がつけば、それに反応できるわけで、で、どういうふうに、反応してゆこうかっていうあたりから、周りの人との相談になるのじゃないのかなぁ。
 「静かにしなさい。」と突然言う前に、「周りをよく見て、適切な反応をしなければいけない状況が出てきたよ。」という情報をまず与えることこそが、次のジェネレーションに対する大人の責任のように僕には思えるのだが、どうだろうか。