平成6年5月28日

 僕は、どちらかと言えば、カーキ色とかダークグリーンとかの色合いの、オーソドックスなスタイルの服が好きだと言うと、最近の僕の着ている物を知っている人たちからは、嘘をつくんじゃないと言われそうだな。 僕のおかみさんが、僕に初めて買ってくれた服は、出始めたばかりの頃のポロのトレーナーで、それは、縫い合わせてあるすべての部分の布の色が違うという、当時の僕にとってびっくりぎょうてんすべきしろものでした。でも、もちろん着ましたよ、なにしろ、彼女が一生懸命探してきて、そんなにもらっていないサラリーをさいて、これを着てもらいたいと買ってきたのですからね、それを着ないと言う訳にはいきません。で、結構似合ったの、これが。あ、俺って、こういうのも着られるんだ。
 当たり前のことですが、僕の子どもたちはこれまでずっと、僕とおかみさんが良かれと思って買ってあげる服を中心とした「人生」を送ってきました。で、ある日、見たことのない「変な」服が、僕の目に止まるのですね。わぁお、なんなんだよこの服は!
 彼らは、自分で服を買ってきたのです。自分で決めて買ってきたのです。すごく新しい気持ちなんだろうなぁ、そういうときって。新しい服を思い切って着るという、やってみればなんとも簡単なことで、自分の守備範囲がドンと広がる。自分の身に付ける様々なもの、そして、その基本にある自分の体そのものに常に注意をはらい、できる範囲で最大の振動を与えておくこと。そうだよな、こういうことが、実は、自立するということの、まず第一歩だったんだよな。
 自分の最近を振り返りつつ、お父さんはしみじみその「ヘンな」服を眺めるのでした。ううむ、ジョギング始めようかな。