平成5年11月27日

 忘れないうちに、もう一度、英国のことについて書こう。ヨークシャー・スカルプチャー・パークに行ったときのビックリのこと。
 そこは元領主のお屋敷のあとで、一回りして屋外に点在する彫刻をちゃんと見るのには、キャンピング・カーで出かけて、ちょっとした山歩きの装備をした方が良いというような広さと規模の屋外彫刻美術館なのだということが、そこに着いてわかったの。いや、確かに広いとは聞いていたけどね。 駐車場から、「車椅子の路地」というのが出ています。ああ、この道なら、街を歩くような格好でも大丈夫じゃないかなと思って、その路地に入りました。これが、すごいの。入ったとたん下り坂です。坂の途中で舗装が切れます。両側から萩のような草が道をおおいかくすように茂っています。その先は、急な斜面をつづら折りに降りて、平らになったと思ったら、道に平たい石が埋め込んであったり、石畳になったり、ついには、倒れた太い木の下をくぐり抜けたり、、、。こりゃすごいや。
 一緒にいたこの公園の教育担当の女の人の考え方はこうでした。「だって、道の表面が変化すると、体に感じることも変化して楽しいでしょう?草は車や身体とこすれあって良い匂いがするようにこうしてあって、セクションごとにハーブの種類が変えてあるの。こうしてあると、目の悪い人もこの道を使って歩けるでしょう?」こりゃすごいや。
 誤解を恐れずに言おう。こういう道は、車椅子での生活というものを、肯定的積極的にとらえている人でなければ創れない。健常だと思っている人が、机の上だけで造ったり、楽しいと言うことはラクをすることなのだと固く信じている人には造れない。文化が深いというのは、こういうことだったんだ。こりゃすごいや。