平成5年5月29日

 5月半ば、晴れ、気温15度前後、乾燥注意報発令中で、ウィークディの休日。午前中、近くの山林の中を、完全装備に身を固め、でこぼこ道用のモーターサイクルを駆って、一生懸命走り抜けるというのが僕は好きだ、っていうのは前に話したよね。でも、実は夜10時以降の廃棄された林道や、指先がジンジンしてくるような冬の日に、ウサギの足跡を追いかけながら行くうっすら雪の積もった林の中の道や、道なんだか沢なんだかわからない程に崩れてしまった所を、普通では考えられないような速度で移動してみるのとか、要するにこの歳になってもお袋に「正弘、いいかげんにしなさいよ。」とつい言われてしまうようなことを、モーターサイクルで一生懸命やるのも、僕は好きなんだよな。 もちろんそれが、ストレス発散によい、ということを否定はしない。けれど、もともとそんなにストレスが溜まるような生活を僕はしていないというのも事実で、これは単になんだか分からないけれど、どうしてもやりたいことなんだな、ということに、先月始め山の中でモーターサイクルで転倒し、鎖骨を折って入院していたときに、気がついた。
 ストレスの解消とかなんとか、そういう目的のためではなく、ただわけもわからずやってしまいたいことがいくつかあるので、僕は今のところすごく幸せな気分でいられるのだなと思う。多分、そういう行動が、人間の雄としての僕の本質を解放してくれているのだと思う。だから、けがをして静かに寝ていると、両親や友人たちが、僕のことを心配してくれているのがしみじみありがたいと思えてきたりして、「ひゃー、歳とっちゃったなあ。」と思いつつも、ついニコニコしてしまうんだよね。みんな、どうもありがとう。