平成5年4月24日

 お母さんから問い合わせの電話がきた。子どもと一緒に美術館の創作室で陶芸の勉強できますか?まず、来て、見て、スタッフと相談しましょう。そして、あなたがやりたいことを、あなた自身のペースでやるための時間割りを組み立てる。やりはじめたら、あとはあなたが好きにやればいいのね。これは子どもであろうが大人であろうが同じです。とお話すると「ああ、きちんと問題意識がない人はだめなんですね。」と続くんですね、これが。ううむ、問題は、この問題意識というあたりだな。 問題意識って、どこかに「はい、私が問題意識です。」とすましてあるというものではない。自分が、今、何かをしようとしている、そのところに問題はあり、その問題にその人自身が気づけるか、否か、そのあたりに問題意識ではなく、勉強する意識の差が出てくるのだと思う。
 勉強って、日々、次々おこる様々な問題をいかに解決するかの練習だと思うのね。このお母さんにとっての問題は「子どもと一緒に陶芸をやるには」なのだけれど、これは実は結構しんどい問題であったりするのだな、本当は。問題を解決するといういうことは、自分の意識を押し通す方法を見つけるということでは、決してない。その問題との折り合いを見つけだす作業といったようなもんだと思うのね。だから、この場合、子どもも変わらなければいけないけれど、お母さんも相当変わらないといけなかったりするのだな、たいてい。でもわかっているしんどさは楽しみに変えやすい。
 僕らの毎日の生活なんて、たくさんの問題の積み重ねの上に成立しているといっても良いわけだから、それ自体を意識なんかしないで、問題との楽しい付き合い方ってのを意識した方が、充実した毎日が過ごせるのではないかと、僕は思う。