平成5年3月27日

 今でこそ、美術関係の仕事をしてはいるけれど、僕は、もともと陸上競技の人なんである。だから、走るのは好きなんである。新しいスニーカーを履いた日、散歩に行こうとして、つい、走りだしてしまって、苦笑いしていたりするのである。自転車も好きなんである。すでに、自転車があるのに、もう1台、買ってしまった。今度のは純粋に遊び用。前にも書いたけれど、モーターサイクルもすごく好きなのである。用途別とはいえ、3台も持っている。何ということだろう。数年前から、自動車がこれに加わった。自動車も好きなんだな、これが。ああ、もちろん、これらの基本として、歩くというのも、僕は好きで、だから、靴は、凝って選ぶ。 趣味が多いのではなくて、僕にとって、これらの道具は「移動する」という一つの趣味のさまざまなヴァリエーションでしかない。どこかに行って何かするのではなく、どこかに行くこと自体が好きなのだということに気付いたのは、モーターサイクルに乗り始めたころかなあ。移動している間は退屈でないのに、目的地に着くと、すぐ帰りたくなるのはなぜか、考えてみたら、わかったの。
 移動すること自体を楽しむのなら、目的地はどこでも良いのだよね。自分の家の周りを枝道だけでちょっと回ったり、スーパーマーケットからの帰り道を遠まわりにするとか、旧市内のガード巡りをしてみるとか、そんなことが、僕は好きだ。考えてみると、こういう楽しみは、中学から10年ほど続いた列車通学に、その原点があるのではないかと思うのね。移動している間、その状況を楽しむ様々な方法を見つける訓練。
 4月から、お姉さんは、高校生になって、今までよりは少し長い通学が、始まる。楽しくやろうな。