平成4年10月24日

 公立美術館の普及部というところで働いている僕の主な仕事は、美術と美術館をめぐる質問や相談にのることで、その相談の内容からわかるのは、みんな、結構緊張して来てんだなぁ、ということなのね。 公立っていうことは、税金で建てられているって事で、まぁ、消防署とか警察署とかと、美術館も同じようなもんなんです。警察署や消防署って、あんまりお世話になりたくないですよね。そこで働いている人以外、しょっちゅう行っている人っていうのもあまりないわけ。でも、あるとなんだか安心で、小学生のとき、遠足で施設を見に行ったりしました、
 ほらこのへんまでは、美術館も一緒でしょ。しょっちゅう行くわけではなくて、ひょっとすると一生行かなくてもすんでしまえて、でもあると何か安心で、子どものころ遠足で行ったことがある、ね?。ただ、警察や消防署の仕事っていうのは、すぐ思い付くけれど、美術館に関しては、すぐにはうかんでこないというところが、違うところなんだと思うのね。消防や警察の社会的な意味なんかわからない時期、僕らは遠足で救急車を見たり白バイのお巡りさんに会ったりする。そして、なんだか嬉しかったでしょう?美術館もそうなるといいんだがなぁと、ぼくは考えている。
 美術館なんか、なんだかよくわからない時期、世の中に美術館という、なんだかちょっとへんてこな場所があって、へんなおじさんが一生懸命難しいお話をしてくれたという記憶だけでもいいから、彼らに与えておきたい。大人になって、ふと「あぁ、美術館なんていうのあったなぁ。」と思い出して、行ってみることに抵抗のない人。こういう人がもう少し増えてくれると、そうとう世の中楽しくなると思うんだがなぁ。