平成4年7月25日

 家の小学生が使っている上靴が古くなってきたので、新しいのを買うということになりました。これまで普通のスニーカーを上靴として使っていたのですが、どの靴がいいかについて話し合っていたら、実は、小学校には決まった上靴があるのだということがわかったのね。爪先に色付きのゴムが付いている、バレーシューズと呼ばれている、あれですよ。ひぇーっ、これって、お父さんが小学校の頃にもはいてたやつだよ。数十年たった今でも、同じ物使っていたんだ!? 経済的な問題など、さまざまな問題に最大限譲歩したとしても、あれは、コンクリートの床の上で、1日の大半を過ごす、小さなあなたの足と体には、許しがたく悪いと、お父さんは考える。こういう部分、僕たちの国はなんだかすごく貧しいんだよねぇ。一番身近に身に付けて、長時間使うものに限って、安っぽい経済性みたいなものを使うってとこがあるんだよなぁ。なんだかびんぼうくさい考えだよねぇ。
 この時期、長い夏休みの間、何か子どもたちを遊ばせるような企画がありませんか、という相談が美術館の創作室にはよせられる。暇な時になにをするかという問題の最も根本的な部分は、自分に最もかかわりが深いもの、たとえばいつも使う上靴を、どれだけ意識的に選択できるかっていう問題と、すごくクロスしているように僕には思える。ふだんの生活の中で、自分の身に付けるものをきちんと意識的に選んでいくという行為と、自由にしてよい時間が出来たときに、それを自分でコントロールして使っていくという行為とは、頭の働きとしては同じ活動のように、僕には思える。
 だから夏休みの活動として、この際、自分の足と体を考えながら意識的に上靴を選ぶ、というあたりから始めてみたらどうかなぁ。