平成4年6月27日

 ミシンがもうなおせないほどへたってしまったので、新しいミシンを買いました。で、子どもたちは街に出掛けて、涼しそうなチェックの布を買ってきました。お母さんと自分たちのスカート、それから僕のアロハシャツを作るんですって。やぁ、うれしいなぁ。もうだいぶ前から、彼らは自分の着るものを自分で作るようになってきていたんだけれど、ついに、僕のものまで、作ってくれるようになったんだなぁ。 6月に入ると、美術館には、幼稚園や保育所の子どもたちが園外保育でやって来る。最近の子どもたちはみんななかなかしっかりした服を着ているんだよなぁ。あなたのお母さんが一生懸命選んでくれたんだよねぇ、というと、彼らは恥ずかしそうに、しかしすごくうれしそうに、僕にその服をはじめて着たときのことを話してくれたりする。
 自分の身に付けるものを選ぶということは、その物によってイメージされるライフスタイルを選ぶということだと、僕は考えている。それを身に付けると言うことは、その物によって自分の生活がどのように画期的に肯定されるかということを楽しむことだと、僕は考えている。
 子どもたちはたぶん何も考えてはいないにちがいないけれど、僕たちが彼らに選んであげたものが、彼らの存在と生活を肯定的に包んでくれているかどうかについて、敏感に感じとっていく。さまざまな経済的な制約はあるにせよ、それを含めて、彼らと一緒にきちんと話し合いながら、身の回りのものを意識していき、そして、彼らが布を買ってきて、僕のシャツを作ってくれる。やぁ、うれしいなぁ。
 自分の生活を肯定的にイメージできるものを身に付ける幸せを、僕は、ここしばらく、楽しみたいと思います。