成人の日、大学で美術を勉強しはじめたばかりだった僕は、一応、町の成人式に出席したのだけれど、式が始ってすぐ、「出席は、まったくの間違いだった」ということに気づいて、しかし、途中で退席する勇気もなくて、ずうっと下を向いたまま困ったなぁと思っていたのを思い出す。

本当の事を言えば、僕はいまだに「大人」とは何かということがわからない。子どもの頃、いろいろしてはいけないこと、というのをたたきこまれたけど、どうも、大人というのは、そういういけないことを、できるだけ平気でやっちゃえる人たちの事だったりするのだな。子どもの頃にはみんな持っていた、地球全体に対する人間としての誠実さのような感覚をそのままにして「大人の世界」に入っていくというのが、実は至難の技なのだということは、ちょっと昔の事を思い出してみればすぐわかる。
毎年の「成人の日」、だから、僕は20歳になった頃の僕を思い出し、今の自分を点検する。静かにね。そうすると、結構うろたえるところがあって、人間の大人になるということがどういうことかわかってくる。子どもがかわいいのは、彼らが誠実だからなのだということも、わかってくる。