平成3年5月25日

 この前の休みに、母親と山に行きました。もちろん、家のすぐ近くの、山というより丘の尾根を、ぶらぶらと歩く、と言うような。
 この辺では一番高い丘を目指して、春の芽吹きのピンク色から初夏の黄緑に変わりかけている雑木林の中の踏み分け道を、子どもたちもいっしょに、先になり後になりしながら彼女と歩きました。独断で言ってしまうと、大正末から昭和初め頃に生まれたおばあちゃんたちというのは、こういう所では、あんまり景色なんか見ませんね。下ばっかりみて歩いていて、次から次と道端に小さな草花を見つけては、感嘆の声を上げると、そう言う歩き方になるわけです。そして、子どもたちを呼んで、その可憐さについて、ちょっと話します。もちろん「子どもたち」には僕も含まれます、当然。
 自然の中に行くと、僕たちは、なんだかいろんなことを知っていないとつまんないんではないかと思ってしまいます。花の名前とか、木の名前とか、鳴いている鳥の名前とか、雲の形から明日の天気は晴れだとか、それから、それにまつわるエコロジカルなさまざまな問題と、地球の行く末と・・・・・・・。
 彼女と歩いていると、でもまぁ、そういう事は、まずはどうでもいいんだなと思えてきます。多分一番大雪なことは、その小さな花を見て、感嘆の声をあげられるかって事なんだな。古い大きな木を見て、立派だねと言えるかって事なんだな。身の周りのいろんな事を、興味深くみつめ、まずびっくりし感動する。どうもこの辺が、僕が、彼女から教えられ、そして彼女たちに伝えて行くあたりなんではないのかなぁ。
 お母さんの言うことって、やっぱり、なかなか面白いね、いつ聞いても。