平成2年6月23日

 中学生になった人が、ついこの前、おばあちゃんに「制服一揃い」をしつらえてもらったばかりなのに、6月からは「夏の制服」がいるんだと言うじゃありませんか。おお、そうだった、制服っていろいろあるんだったねぇ。ようし、今度は僕が買ってあげよう。何と言ったらよいか、僕の家に「制服」ってもんがやってきて数カ月たってしまいました。20年程前、元気な高校生として「制服廃止」なんてことをまじめに考えていた世代の一人としては、ここに来て、ちょっとどういう感じになるのかなぁって所があったのね、自分の子どもがそれを着るって事になったときに。
 合理性と機能性だけから考えてみても、実際には案外「制服」って実用性に欠けてるんじゃないかなぁ。あれを着て、美術館に見学に来て、ついでにちょっと粘土遊びをしてゆこうって人たちを見るにつけ、気の毒でしょうがない。
 あれの必然は、どう考えても、着る方ではなくて、着させる方にのみ存在しているように僕には思えて、普通の大人になるための実際的な勉強をするときに着る服ぐらい、自分で決めればって感じがするんですけどねぇ。
 とはいえ、そんな僕の考えとはほとんど関係なく、彼女は、一つ洋服が増えたって喜んでいるように見えるんでちょっとコケてしまうんだなぁ。そうか、君らの間ではそこまでファッションになっちゃっているわけね。「制服」がファッションの一つとなってしまえば、僕等があの頃考えていた、やめたいのは制服そのものでは無くて、「制服的な考え方」と言うものなのだってあたりのことが、もう具体的に始まっちゃってるってことだから、めでたしめでたしのはずなんだけど、どうも、違うような気がするのは、お父さん、やっぱし歳とってきたのかなぁ。