平成2年1月27日

 朝6時45分に、僕の家では目覚ましロボットが「時間だから起きろ!」と騒ぎ立てます。ううむ、しかしこの時期、布団から抜け出すのはつらい、と思っていると、子どもたちが僕の布団にもぐり込んできます。僕は子どもの体を抱いてもうしばらくうつらうつらしています。ほとんど至福の時間といっていいですね、こういう時間は。彼らの体は、ぽかぽか、すべすべ、むくむく、ぷりぷりとしていて、触っていると、お父さんは、心の中から優しくなってしまうのだなぁ。人間の体って、すごくいとおしいものだったんだなぁと、しみじみ感慨にふけってしまいます。
 この人がまだ赤ちゃんだった頃、抱き上げるときゅっとしがみついてきたときの小さな手にこもった力の感じなんか思い出してしまったりすると、もう、たまりませんね。これをなんとかしてあげたいと思う、そういうあたりが、人間が人間を教育しようとする原点なのではないかしらと思いますね。
 彼らの体を触りながら、僕の体も点検してみます。ううむ、なんだか最近いとおしんでいないよなぁ、自分の体・・・。僕の体も、こういうすてきな体だったんだよなぁということに思いいたると、普段酷使し続けている自分の体のことも、ふと我にかえって、いとおしんであげなくっちゃという気持ちになってきます。
 自分の体をいとおしく大切にしていないと、どうも、他人の体だっていとおしく大切に思えなくなってしまうのではないかなぁと、僕は最近考えています。自分自身の体を愛し、いとおしく思うことから、自分以外の人や物とのお話が始るのではないかしら。
 子どもの体に触りながら、僕は自分の体について思いを巡らせ、そして決心をして、布団から抜け出すのです。