平成元年 6月24日

 「正直者であること」というのは、美術家であるための条件の一つであると誰かが言っているのですが、子どもたちとつきあうときも、これはとっても大切な必要条件であると、僕は思っています。良く考えると子どもとだけじゃないですけどね。この前、上の娘に新しいゴムナガを買いました。街の中の靴屋さんを回ったあげく、やっと一つ見つけて買ったのです。ちょっと長めのゆったりした、普通の形の黒いゴムナガ。前にはいていた黄色と青色のは妹へのお下がりになりました。これもなかなかステキな物だというのを妹も知っていたので彼女もニコニコです。
 普通に良い子どもの靴って、あんまりないんですよね。靴底がやたら薄くて、踵のホールドがまったくない。こういうのって、これで良いという、何か根拠のような物があって、それで全部こうなっているのかなぁ。 
 僕は、自分の靴を買うときには、大変注意深く情報を集め、実物を見て、目的や使用状況を考え、値段について頭を悩まし、決心をし、それでも少しうろうろしてやっと買います。彼女らの靴を買うときも、ほとんど同じにしたいのですが、成長が早いので、コストについては僕の時より少し厳しい選択をせざるをえません。
本当に足と体に良い靴を選ぶとなると、ううむ、ちょっと高いんだよなぁ。正直者としてのお父さんは、心から悩んで、彼女らと真剣に相談するのでした。
 経済的な問題も含めて、子どもたちにきちんと説明をしてみると、彼らが、大人が思っているより遥かに真剣かつ柔軟に物を考えているのがわかります。そして、不公平でない説明があれば彼らは、きちんと納得をするのでした。ううむ、これも、別に、子どもと限った事ではないですねぇ。だいじょうぶなんでしょうか、僕達大人の間では・・・。